『ブラックジャックによろしく』によろしく
第13巻まとめ精神科編まとめ

2006/01/26

皆さんお元気ですか?えれです。
お久しぶりです(^^)。

ずっとどんな言葉でこの精神科編をしめくくろうかと考えていました。
しかし、斉藤せんせい他、皆の何かへの希求が続く限りしめくくりの言葉などなくても
いいのかもしれません。

さて、ここでは、単行本13巻のまとめと同時に、精神科編そのものを振り返ってみたいと思います。

まず、精神科編が私にとって完璧なオーバースペックだったことを白状しておきましょう。
もう、本当に能力以上の仕事、と言ってもいいならそれでした。
それはまず私が本編を、始まる前に「精神科病棟」の話、ではなく「精神科外来」の話と勘違いして
いたということもあります。
つまり、今街のどこか、駅前の雑居ビルや市街の一角にほんのささやかな姿を表して増え続けている、
あの小さなドア… 今現代を生きる人の一種の駆け込み寺のような場所、その話だと思っていたのです。

当初私は「精神科編」の感想をやるのに二の足を踏んでいました。
しかし、家族の強い要望と励ましにこれをすることにしました。

感想第34回「罪状,『無意識』」の回で出てくる異常者と呼ばれた女性というのは私のことです。
もう、お分かりですね。

では、次に一点ずつ感想のあいまで気になりながらも触れられなかった事柄に着目していきましょう。
中には作品の批判ともなるので、流れを妨げるのを避け、あえて触れなかったことも含まれております。


・新聞の名前

今回登場した門脇記者、種元記者の勤める“読捨新聞”ですが、このいささか戯画化された名前は
実際の新聞社を想定させる事もあり、今回使われるべきではなかったのではないかと考えて
います。
なぜフィクションの世界に燦然と君臨する“東都新聞”を使わなかったのか(ウソ・^^;)非常に
納得のいかない部分であります。
また「読み捨て」、という名前はやはり戯画化されすぎており、描かれた物語の真実味をそぐ形に
なりはしないかという懸念もあります。


・その男、の顔

やはりあの男の顔は、はっきりと書き表さず、黒で塗りつぶすなり、画面に現れないようにするなりの
配慮をしたほうがよかったかと思います。
なぜなら、精神科編の望むものが「精神障害者は犯罪を犯す」という世間のあやまった流布を正すことで
あるなら、犯人のこのような描かれ方は、「凶悪な顔をした人物は犯罪を犯す」という見方を生じさせる
ことにもなりかねないからです。

固定した考え・見方を想起させる表現はこの作品の意図に反しています。
やはりここは工夫が欲しかったな、と思います。


・描かれるべきことはすべて描かれたのか?

いささか駆け足に終わってしまった感のある精神科編、当初描かれる予定だったことは描かれたのでしょうか。
本来、門脇記者と奥さんとの関係、門脇記者が指摘した伊勢谷医師の“罪”など描かれるべきことは
まだあったのではないかと、これは邪推になるのかもしれませんが思っています。
というか自分が一読者として読みたかった。

私はこのシリーズがスタートした時、「日本における精神科に対する新たな考え方のスタンダードができるかも
知れない」と申しました。
この作品が提起した問題が何かのかたちで結実してくれることを願ってやみません。


・斉藤せんせいのこれから

第13巻の最終話『坂道を登る』で、斉藤くんは
「僕が全部壊してやる…… 僕が全部作ってやる……」と自らの決意表明をします。
でも斉藤くん、忘れないで。
君の前にたくさんの立ちつくした戦士たちや希望なかばで倒れた人々がいたことを。
この姿は第120話『プレゼンテーション』での門脇記者の独白、殺される覚悟がないのなら……
舞台になんて上がらなければいい……」と重なるところがあります。
そしてそれは作者、佐藤秀峰先生の決意表明でもあるのでしょう。


さて、ざっと見てきましたが、また何か気づいたことがあったら、もしできたらもう一度再考の場を
設けたいと思います。
新編の感想もまた行うか、というのはまだ分かりません。以前にも申しましたとおり、これは
斉藤くんの行く科に大きく左右されるからです。
どちらかというと今は、これ以上のことをやるには精神科編で全てを使い切ってしまったという
気持ちのほうが大きいです。

しかし、もし希望が許されるなら斉藤くんにはちょっとだけ精神科「外来」(大学病院にも
ありますよね、きっと…)に新しい科に行く前に寄ってみて欲しい、そんな気持ちがあります。

それでは、稿も尽きてきたようです。
皆さまには、本当におつきあい頂いてありがとうございました。
途中メールを下さった皆さん、本当にありがとうございました。大変励みになりました。

世界は無神経に回転を繰り返します。
神様の携帯電話はいつも話し中です。

でも、私は本当にいつもただのひとりだけれど、前も言った通り何もなければそれが一番だけれど、
少しでもどんな人間も自分のブラックジャックに出会ってくれること、それを願ってやみません。

皆さん、本当に本当にここまでありがとうございました。
えれでした。

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