冬休みの思い出(3)〜母を語る〜

2000/01/11

前回の日記でちょっと母の事に触れましたので、
今日は思い切って母親について書きたいと思います。

私の母は元気で愉快な50代の未亡人です。
愉快なと書いたのは昔者(むかしもの)であるからですが、それは
ある程度の年代ではしかたないことと言えましょう。
そう言えば「ポッケ」なんて言い方にもある時代の匂いがしますね。

そして昔者の母は愚痴・不満が多いです。
彼女の生活と意見は「つまらない」「くだらない」に象徴されます。
「全くお正月のテレビはつまらないわねぇ!」
「全く世の中くだらないことばかりねぇ!」
(以下略)
もちろんこれは今がお正月だからそうなんであって、日曜だったら
「日曜のテレビは・・・・」となることは言うまでもありません。
その汲めど尽きない怒りときたら、まるで彼女の意思を無視して
世の中があらぬ方向へ変貌を遂げたかのような憤懣ぶりです。
もっとも、これはやはりある年代の方々には共通の想いでしょうが・・・

彼女の怒りはもちろん卑近な存在である娘の私にも例外ではありません。
つまらないと決められたTV画面を見つめている訳にもいかないので、
そろそろと本のページなんかめくり出すと、すかさずお正月まで本なんか
読んでつまらない子だとしかられます。
食欲が無いのも腹いたも、果ては風邪さえ本の読みすぎにされるので
うっかりした事は言えないのです。
私の少女時代は、まるで発禁書を読む地下活動家のように気苦労の多い
ものでした。

インスタントコーヒーをがぶ飲みしたいなぁと思っても、台所を
うろうろしているとすぐに見つかって
「コーヒーならちゃんと豆からドリップしてあげるのよ!!」と
なじられます。
この調子で一日にティータイムが5、6回はありました。
コーヒーの壜はどこに隠したんだか最後の日まで見つけることは
できませんでした。
このように私の母はとても頑固な人でもあります。

母は最近映画をビデオに録画して暇な時に見ることを覚えました。
ケーブルテレビに入っている友達と一緒に見たりもするようです。
そうした一本(確か『アメリカン・プレジデント』という映画だった)
を見終わって言うには・・・・
「全くつまらない映画だったわ!」

私はついに「お母さんが面白いって言うの聞いたことない!
一体どんなのならいいの?」と言ってみました。
すると母はぐっ、とつまったような顔になり、苦悶の表情を
浮かべること数分後、「この間のあれは・・・まぁ・・・面白かったよ」。

”この間のアレ”とは何ぞや?
よくよく聞いてみると、お盆帰省に地元の映画館で私とSAMEと三人で
並んで観た『スターウォーズ・エピソード1』の事だったのです。
「寝てたじゃん!!」
「ちょっとだけだって!!」
それにしても、はっ、話が遠すぎる、時間感覚も何もめちゃくちゃです。
そして、「あの続きはいつできるの?」
知るか〜、ルーカスに聞いてくれ!

しかし、「つまらない」という母の慨嘆には、進歩が確実に置き去ろう
としているものと、置き去られてゆく側からの異議申し立てが含まれて
いるように思うのは大げさでしょうか。
子の世代は、不甲斐なさを恥じいるばかりです。

そんな訳で、これが私の母です(分ってもらえたかな・汗)。
こんな母もSAMEだけは気に入っているようですが・・・
ルーカス監督には、ひとつ早く次回作の完成を希望します(笑)。

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